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遺産分割における換価分割の注意点【相続登記の手順と司法書士の役割】

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換価分割とは?メリット・デメリット、他の分割方法との違いを解説

遺産分割には、いくつかの方法があります。その中の一つに、「換価分割」というものがあります。換価分割とは、一体どのような分割方法なのでしょうか。

この記事では、換価分割の概要やメリット・デメリットに加え、他の分割方法と比較しながら、換価分割の使い分けについて解説していきます。

換価分割とは?

換価分割とは、遺産に含まれる財産を売却して現金に換えた上で、その現金をもとに相続人間で分割する方法です。

遺産分割協議において、相続人間の遺産に対する評価額に差が生じてしまうケースは少なくありません。換価分割であれば、売却によって得られた客観的な金額に基づいて分割できます。

また、換価分割は、相続人全員が現金を受け取ることができるため、相続税の納税資金を確保しやすい点もメリットとして挙げられます。

もちろん、すべてのケースにおいて換価分割が最適解となるわけではありませんが、実務上、非常に使いやすく、相続人同士の紛争リスクも低減できる有効な選択肢の一つと言えます。

換価分割のメリット

換価分割のメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。

* 分割の公平性が高い
* 換金することにより、相続税などの納税資金を確保しやすい

換価分割のデメリット

換価分割のデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

* 不動産を換価分割する場合、売却費用がかかる
* 売却困難な不動産がある場合は、手続きに時間がかかる
* 換価分割の手続きを担う相続人に負担がかかる

現物分割との違い

遺産分割の方法には、換価分割以外にも、遺産をそのままの形で相続する「現物分割」という方法があります。例えば、不動産や貴金属などを、それぞれの相続人がそのまま相続します。

この方法のメリットは、愛着のある財産をそのまま引き継げる点にあります。しかし、遺産の評価額が相続人ごとに異なる場合、分割が不公平になる可能性があります。また、不動産のように分割が難しい財産の場合、共有状態になり、その後の管理や処分が複雑になる可能性も孕んでいます。

換価分割と比較した際の、現物分割のメリット・デメリットは以下の点が挙げられます。

【メリット】
* 愛着のある財産を取得できる
* 売却費用がかからない
【デメリット】
* 遺産分割の公平性を保つのが難しい
* 不動産などの場合、共有状態になる可能性もある

代償分割との違い

代償分割とは、特定の相続人が遺産を単独で取得する代わりに、他の相続人に対して金銭などを支払うことで、遺産の公平性を図る分割方法です。

この方法のメリットは、特定の遺産をそのままの形で取得できる点です。ただし、代償金を支払う相続人は、多額の資金を用意する必要があるため、経済的な負担が大きくなってしまう可能性があります。

換価分割と比較した際の、代償分割のメリット・デメリットは以下の点が挙げられます。

【メリット】
* 特定の遺産をそのままの形で取得できる
【デメリット】
* 代償金の支払いが難しい場合がある
* 代償金の額や支払い時期など、調整に時間がかかりやすい

遺産分割協議で揉めた場合は?

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。

調停でも当事者間で合意が成立しなければ、最終的には家庭裁判所の「審判」によって、遺産の分割方法が決定されます。

相続した不動産は亡くなった人名義のまま売却できる?

相続不動産を売却しようとする際、「被相続人から直接買主へ名義変更すればいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、日本の不動産登記法では「中間省略登記」が認められていないため、一度相続人への名義変更が必須となります。つまり、「被相続人→相続人→買主」という流れになるのです。

では、相続人への名義変更にはどのような方法があるのでしょうか?大きく分けて2つのパターンがあります。

まず、一般的なのは「法定相続分に従って登記する」という方法です。これは、民法で定められた相続割合で不動産を相続する場合に有効です。例えば、配偶者と子供が1人いる場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子供が2分の1となります。

一方、「法定相続分以外の割合で登記する」という方法もあります。これは、相続人同士で遺産分割協議を行い、法定相続分とは異なる割合で不動産を相続する場合に選択します。

例えば、兄弟間で将来の負担を考慮し、兄が相続分の多くを負担する代わりに、妹が実家の土地と建物を相続する場合などが考えられます。

なぜこのような方法をとる必要があるのでしょうか?それは、相続税対策と関係があります。仮に、法定相続分とは異なる割合で売却代金を分割する場合、贈与税が発生する可能性があるからです。

例えば、先ほどの例で、兄が本来受け取るべき相続分よりも少ない金額しか受け取らなかった場合、兄から妹への贈与とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。

このように、相続不動産の売却には、相続登記や税金に関する専門知識が必要となります。スムーズな売却を実現するためにも、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

相続人代表者へ便宜的に名義変更することも可能

相続では、現金や預貯金などの分割しやすい財産だけでなく、不動産のような分割しにくい財産も対象になります。相続人が少ない場合は、話し合いもスムーズに進みやすいですが、相続人が3人以上になると、遺産分割協議がまとまるまでに時間がかかってしまうケースも少なくありません。

特に、不動産を売却して現金化した後、その売却代金を相続人で分割する「換価分割」を行う場合、相続人全員を売主にしてしまうと、売買契約や決済手続きが非常に煩雑になってしまいます。

例えば、売買契約を締結する際、売主である相続人全員が、場所や時間を合わせて顔を合わせなければなりません。また、金融機関での決済の際も、同様の手間が発生します。相続人が遠方に住んでいたり、仕事で忙しい場合は、スケジュール調整が困難になるケースも考えられます。

さらに、売買条件の交渉においても、相続人全員の意見が一致しなければならず、合意形成に時間がかかってしまう可能性があります。最悪の場合、話がまとまらず、せっかくの売買契約が白紙になってしまうことも考えられます。

そこで、換価分割を行う場合は、相続人のうちの一人を代表者として選任し、その代表者へ便宜的に不動産の名義変更を行う方法が有効です。名義変更をしておくことで、代表者単独で売買契約や決済手続きを進めることが可能となり、スムーズな不動産売却を実現することができます。

このように、換価分割をする場合、相続人全員への名義変更ではなく、代表相続人への名義変更を行うことによって、手続きの負担を軽減し、売却活動をスムーズに進めることが可能になります。

売却時期が未定の場合

相続した不動産をしばらく売却しない場合でも、代表相続人へ名義変更した方が良いのかどうか迷う方は多いのではないでしょうか。

確かに、相続手続きをスムーズに進めるために、代表相続人名義で預貯金の解約や相続税の納税を行うケースは少なくありません。しかし、不動産の名義変更については、慎重に判断する必要があります。

まず、不動産の名義変更をすると、固定資産税や都市計画税などの税金は名義人である代表相続人がひとまず負担することになります。売却時期が未定の場合、これらの税金を代表相続人が支払い続ける必要があり、後々トラブルの原因になりかねません。また、マンションであれば管理費や修繕積立金も名義人が負担します。

さらに、税務上の観点からも注意が必要です。換価分割のために一時的に名義変更をすることは認められていますが、売却の目処が立たないまま長期間放置すると、税務署から換価分割が認められない可能性もあります。

また、名義変更によって、不動産を共有持分ではなく単独所有としているため、名義人以外の相続人が、本来相続すべきであった財産価値を享受できない可能性も出てきます。

もちろん、名義変更にはメリットもあります。例えば、売却時に買主を探しやすくなったり、金融機関からの融資を受けやすくなるといった点です。

最終的には、売却時期、相続税の負担、相続人同士の関係性などを考慮した上で、名義変更をするかどうか判断する必要があります。専門家である税理士や司法書士に相談しながら、ご自身にとって最適な方法を選択するようにしましょう。

遺産分割協議書への記載方法

換価分割をする場合、遺産分割協議書には、この換価分割に関する文言を明確に記載しておくことが重要になります。

遺産分割協議書は、相続人間で遺産分割の内容を確定させるための重要な書類であり、後々のトラブルを避けるためにも、明確かつ具体的な内容を記載する必要があります。換価分割においては、特に以下の点を明確に記載することが重要です。

まず、どの遺産を換価分割するのかを特定します。例えば、不動産の場合には、所在地、地番、地目、面積などの情報を明記します。次に、換価の方法を具体的に記載します。換価分割では一般的に売却による換価が行われますが、競売や入札など、他の方法を採用する場合には、その旨を明確に記載する必要があります。

さらに、換価によって得られた代金から控除する費用を明記します。換価分割には、不動産の売却費用や仲介手数料、登記費用などの様々な費用が発生する可能性があります。これらの費用を誰がどのように負担するのかを明確にしておくことが重要です。

そして、換価後の残余財産の分割方法を明確に記載します。換価によって得られた代金から費用を控除した後の残余財産を、誰がどの程度の割合で取得するのかを明確に記載しておく必要があります。

遺産分割協議書の作成にあたっては、専門家のアドバイスを受けることも有効です。司法書士や税理士などの専門家は、遺産分割に関する豊富な知識と経験を有しており、適切なアドバイスを提供してくれます。

なお、換価分割は、相続税の課税対象となる場合があることに注意が必要です。換価分割を行う場合には、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な対策を講じておくことが重要となります。

換価分割と税金

換価分割とは、相続財産である不動産などを売却し、現金に換えてから相続人で分割する方法です。一見、シンプルで合理的ですが、税金面で注意すべき点がいくつかあります。

まず、換価分割によって得た財産には相続税が発生します。重要なのは、相続税の対象となるのは売却代金そのものではなく、不動産の相続税評価額である点です。仮に市場価格よりも低い金額で売却してしまった場合でも、相続税評価額に基づいて相続税が課税されるため、割高な税負担を強いられる可能性があります。

また、不動産の売却によって利益が出た場合には、譲渡所得税の対象となります。換価分割は相続とは別の行為とみなされるため、売却益に対して譲渡所得税が課税されるのです。ただし、相続税として支払った金額の一部を譲渡所得の取得費として計上できる制度もあるため、条件によっては譲渡所得税を抑えることが可能です。

さらに、換価分割を行う際には、贈与税にも注意が必要です。例えば、相続人のうち一人に不動産の名義を移した後、その相続人が代表して売却し、他の相続人に代金を分配する場合、贈与税が発生する可能性があります。遺産分割協議書に「代表者一人の名義にした後、換価分割を行う」旨を明記しておかないと、他の相続人への金銭分配が贈与とみなされ、贈与税の対象となってしまう可能性があるからです。

換価分割は、手続きを適切に行えば、贈与税は発生しません。安易な遺産分割協議書の作成は思わぬ税負担につながる可能性があるため、税務の専門家などに相談しながら、慎重に進めることが重要です。

換価分割における諸費用

相続によって不動産を取得した場合、売却を考えるケースも多いでしょう。しかし、いざ売却しようとすると、様々な費用が発生することに驚かれるかもしれません。「換価分割」で不動産を売却する際にも、それは例外ではありません。

換価分割とは、相続財産を売却して現金化した後、相続人へ分割する方法です。不動産を売却すれば、共有状態を解消できるだけでなく、相続人それぞれが現金で受け取れるため、公平な遺産分割がしやすいというメリットがあります。

しかし、不動産売却には、売却活動を行う不動産会社への仲介手数料以外にも、様々な費用が発生します。例えば、相続登記に必要な司法書士への報酬、売却前の状態に戻すためのリフォーム費用、遺品整理や特殊清掃が必要な場合はその費用など、多岐にわたります。

さらに、戸建ての場合、マンションと比べて売却に時間がかかったり、測量や解体が必要になるケースもあり、費用がかさみやすい傾向があります。これらの費用を把握していないと、想定よりも手元に残る金額が少なくなる可能性もあるため注意が必要です。

換価分割を行う場合、事前にどの程度の費用が発生するのか、相続人全員でしっかりと把握しておくことが重要です。専門家に相談し、費用の見積もりを依頼するなどして、透明性を確保することで、後々のトラブルを避けることができるでしょう。

不動産を換価分割するときの費用

マンションよりも戸建ての方が売却にかかる経費が多い傾向にあります。そのため、戸建てを相続して売却する際には、あらかじめ費用を計算しておくことが重要です。

まず、マンションと戸建て、どちらの場合も不動産会社の仲介手数料が発生します。これは売買価格の3%+6万円(税込)が上限と決まっています。

次に、戸建ての場合、土地の境界が曖昧だと、隣人とのトラブルに発展する可能性があります。そのため、売却前に土地の境界を明確にするための「境界確定費用」がかかります。

さらに、戸建ての場合、売却前に測量が必要となるケースが多いです。そのため、数十万円程度の「測量費用」も考慮しなければなりません。

また、マンションでは必要ない費用として、庭木伐採・撤去費用や残置物撤去費用が挙げられます。戸建ての場合、庭木や残置物の量によっては、これらの費用が大きく変わる可能性があります。

さらに、古くなった戸建てを更地にして売却する場合には、「建物解体費用」という高額な費用が発生します。解体費用は建物の構造や広さによって異なりますが、数百万円かかるケースも少なくありません。

このように、戸建てはマンションと比べて売却にかかる経費が多岐にわたるため、注意が必要です。

換価分割の相談は誰にする?

不動産を売却する際、一般的には不動産業者に仲介を依頼します。しかし、相続によって取得した不動産の売却は、通常の不動産売却とは異なる手続きや注意点が存在します。その特殊性について詳しく解説していきます。

相続した不動産を売却する場合、遺産分割協議や相続登記など、法律的な手続きが必須となります。これらの手続きは、不動産業者では対応できません。なぜなら、不動産業者には、遺産分割協議書の作成や相続登記を行うための法的代理権限がないからです。

中には、「相続コンサルタント」や「相続〇〇士」といった民間資格を掲げる営業マンもいますが、これらの資格は国家資格とは異なり、法律で認められた権限を持っているわけではありません。相続における不動産売却は、専門知識を持った司法書士や弁護士といった国家資格者に相談することが不可欠です。

相続不動産の売却では、遺産分割協議の段階から専門家に相談することで、後々のトラブルを避けるだけでなく、スムーズな売却活動を進めることが可能となります。特に、相続した不動産を売却して現金化する「換価分割」を行う場合は、専門家のサポートがより重要となります。遺産分割協議の内容によっては、相続税の負担額が大きく変わる可能性もあるため、税務面を含めた総合的なアドバイスを受けることが大切です。

換価分割の相談は経験豊富な司法書士へ

相続によって不動産を取得したものの、どのように売却を進めたら良いか悩んでいる方は少なくありません。相続不動産の売却(換価分割)は、通常の不動産売却と比べて複雑な手続きが必要となるためです。

例えば、相続不動産を売却するためには、まず、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がその不動産を取得するかを決定する必要があります。遺産分割協議が整えば、その内容を記した遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の作成は、専門性の高い知識が必要となるため、司法書士に依頼することをおすすめします。また、相続不動産の売却においては、思わぬトラブルが発生する可能性もあります。

当事務所では、相続手続き(遺産分割)の段階から司法書士が介入することで、遺産分割協議書の作成サポートを含め、トラブル回避とスムーズな売却をサポートいたします。相続不動産の売却でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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