民事信託・家族信託では、「委託者」「受託者」「受益者」の理解が大切です。
この記事では、家族信託における「受益者」や、「受益権」について解説します。
「受益者」や「受益権」って何?
民事信託・家族信託における「受益者」とは、信託財産から経済的利益を受け取る権利(受益権)を有する者をいいます。
つまり、受益者は必ず受益権を有しています。
受益者が自分以外の場合は、内諾してもらう必要あり?
家族信託では、「委託者と受益者が同じ」というケースがよくあります。
委託者と受益者が同じである信託が、自益信託です。
自益信託では、受益者になってもらうための内諾を考える必要はありません。
自分が自分に対して内諾する、というのはおかしいですよね。
では、委託者と受益者が異なる場合はどうでしょう。
委託者と受益者が異なる信託が、他益信託です。
他益信託では、受益者候補者の内諾を得る必要はあるのでしょうか。
委託者や受託者は、自由に受益者を指定して問題ないのでしょうか。
答えは、受益者は信託契約の当事者となりませんので、内諾は不要です。
「遺言信託」や「自己信託」でも、受益者を独断で定めて問題ありません。
そのため、受益者が胎児等でなければ、内諾を得ておいた方が安心です。
受益者になれるのはどういう人?
受益者になれるのは、以下のような者です。
- 委託者(自益信託)
- 委託者以外の個人(他益信託)
- 法人(株式会社・合同会社・NPO法人・組合・団体等)
- 権利能力なき社団
- 胎児
- 将来生まれる可能性のある未存在の子
胎児や将来生まれる可能性のある未存在の子も受益者に指定できるのが、家族信託のメリット。
そのため、家族信託は遺言の代用としても使うことができます。(遺言代用信託)
なお、「出生」など、受益者になるための条件が付されている場合は、その条件を満たしたときに受益者となります。
受益者は一人だけ?何代にもわたってもよい?
受益者は一人に限られません。
例えば、自分と配偶者に受益権を与えるというように、受益者を複数にすることも可能です。
また、受益者は一代限りではなく、何代にもわたって受益権を取得させることもできます。
これが、受益者連続型信託です。
受益者連続型信託は、相続や事業承継で利用されることが多い仕組みです。
受益者に課される税金は?
信託財産の処分等により経済的利益が生じた場合、原則、所得税は受益者に課税されます。
委託者と受益者が同一である自益信託では、信託前と信託後の納税義務者に変更はありません。
委託者と受益者が同じであっても、信託財産は、委託者の財産から独立して存在します。
そのため、委託者が破産しても、信託財産は委託者の破産財団に属することはありません。(信託の倒産隔離機能)
なお、委託者と受益者が異なる他益信託の場合、みなし贈与として贈与税の課税対象になります。
家族信託は節税のための制度ではありませんので、ご注意ください。