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相続人が行方不明で連絡が取れないときの遺産分割協議

相続・遺言

行方不明で連絡の取れない方(不在者)が相続人にいる場合、不在者を除いて遺産分割協議をしても協議は無効です。
遺産分割は、相続人全員で合意する必要があります。

もし不在者がいるときに遺産を分割するためには、不在者財産管理人の制度を利用します。
不在者財産管理人とは、不在者の代わりに不在者の財産を管理・保存することができる、いわゆる代理人です。

不在者財産管理人の選任は、不在者の従来の住所地や居所地の家庭裁判所に対して申し立てます。
申立は誰でも出来るわけではなく、不在者の配偶者・相続人・債権者などの利害関係人や、検察官でなければなりません。

不在者財産管理人選任の申立があれば、家庭裁判所は、事実を確認して選任の要否を判断することになります。
具体的には、不在者の親族から事情を聞いたり、以下のような資料を確認することで審理をします。

  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

必要書類の中では、「不在の事実を証する資料」を用意するのが大変です。
不在の事実を証する資料には、警察の家出人届出受理証明書や、不在者の住所地宛に出した郵便が『あて所に尋ねあたりません』というスタンプが押されて戻ってきた封筒等が該当します。

申立ての際には申立ての理由が必要となり、この理由が不十分であれば不在者財産管理人は選任されません。
申立てが認められた場合、不在者財産管理人には申立人の推薦する親族や、弁護士・司法書士等の第三者が選任されます。

なお、弁護士・司法書士等の専門職が不在者財産管理人に選任されると、専門職の報酬等に充てるための予納金を求められる場合があります。
予納金は数十万円~100万円程度となるのが一般的です。

さて、ようやく不在者財産管理人が選任されましたとします。
しかし、無事に不在者財産管理人が選任されても、すぐに遺産分割協議はできません。

不在者財産管理人の権限は、不在者の財産を管理・保存・利用する範囲に限られ、もし権限外の行為をしたい場合は、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得る必要があるためです。
遺産分割協議は財産の処分行為にあたりますので、もし許可を得ずに遺産分割協議を行った場合、協議は無効となります。

また、家庭裁判所から遺産分割協議の許可(権限外行為許可)を得るためには、原則、不在者の法定相続分は確保しなければなりません。
不在者財産管理人は不在者の利益を守るために選任されており、不在者の権利を侵害するような協議内容は認められないためです。

その後、許可を受け無事に遺産分割が終わると、不在者財産管理人は相続した財産を管理することになります。
遺産分割協議を目的として不在者財産管理人選任を申し立てた場合でも、協議成立により不在者財産管理人の職務が終わるわけではありません。

不在者財産管理人の職務が終わるのは、以下のような場合です。

  • 不在者が現れたとき
  • 不在者について失踪宣告がされたとき
  • 不在者が死亡したことが確認されたとき
  • 不在者の財産がなくなったとき

不在者が現れた場合は、不在者に対して財産を引渡します。
また、不在者について失踪宣告がされたり、不在者が死亡したことが確認されれば、不在者の相続人に財産を引継ぎます。

このように、不在者財産管理人の職務は労力がかかるため、不在者財産管理人は、家庭裁判所に対して報酬付与を申し立てることが可能です。

不在者財産管理人の報酬額は家庭裁判所が判断し、決定された額は不在者の財産から受領します。
勝手に不在者財産管理人が自分の報酬額を決めて不在者の財産から受領すると、横領となりますのでご注意下さい。

西宮市の司法書士・行政書士今井法務事務所では、不在者財産管理人選任申立てのお手伝いをしております。
お困りの方は、お電話又はメールフォームにてお気軽にお問い合わせ下さい。

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