相続に関するご相談の中で、特に多く寄せられるのが「遺産分割時に不動産の価値をどのように算定するのか?」というご質問です。この問いに対する答えは、状況や目的によって異なります。
本記事では、遺産分割における不動産の評価方法について、専門家の見解や公的な情報を交えながら詳しく解説いたします。
不動産の評価方法の種類
不動産の評価には主に以下の方法があります。
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実勢価格(市場価格):実際の市場で取引される価格であり、遺産分割時にはこの価格が基準とされることが多いです。
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路線価:国税庁が相続税や贈与税の算定基準として毎年公表する価格で、相続税評価額とも呼ばれます。実勢価格の約80%程度とされています。
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固定資産税評価額:市町村が固定資産税を算定するための基準となる価格で、公示価格の約70%が目安とされています。
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公示価格:国土交通省が毎年公表する標準的な土地の価格で、実勢価格に近いとされています。
これらの評価方法は、それぞれ目的や算定基準が異なります。例えば、相続税の計算には路線価が用いられますが、遺産分割の際には実勢価格が重視される傾向があります。
遺産分割における不動産評価の実務
遺産分割協議において、不動産の評価方法は相続人全員の合意によって自由に決定できます。
しかし、相続人間で意見が分かれた場合、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に進むことがあります。その際、裁判所では不動産の実勢価格を基準とするのが一般的です。
具体的には、不動産業者に査定を依頼し、その査定額を基に交渉を行います。査定額は業者によって異なるため、複数の業者に依頼し、査定額の平均を取ることが推奨されます。
それでも合意に至らない場合、裁判所が不動産鑑定士を選任し、鑑定評価を行うことがあります。ただし、鑑定には数十万円の費用と数ヶ月の時間がかかるため、慎重な判断が必要です。
相続税評価額と遺産分割の関係
相続税の計算には路線価が用いられますが、遺産分割の際の不動産評価とは異なります。
相続税評価額は税務上の評価であり、実際の市場価値(実勢価格)とは乖離があることが多いです。そのため、遺産分割協議においては、実勢価格を基準とすることが公平性の観点から望ましいとされています。
不動産評価における注意点
不動産の評価方法によって、相続人間の受け取る遺産の価値が大きく変わる可能性があります。そのため、評価方法の選択は慎重に行う必要があります。
特に、代償分割を行う場合、不動産の評価額が適切でないと、不公平が生じる可能性があります。また、共有名義での相続は、後々のトラブルの原因となることが多いため、避けることが推奨されます。
まとめ
遺産分割における不動産の評価は、相続人全員の合意があれば自由に決定できます。しかし、意見が分かれた場合や公平性を重視する場合、実勢価格を基準とすることが一般的です。
不動産の評価方法は多岐にわたり、それぞれの特徴や目的を理解した上で、適切な方法を選択することが重要です。相続に関するお悩みやご不明点がございましたら、専門家への相談をお勧めいたします。